その香りを嫌いになる前に、
「
さよならだね、
最後に君の名前
呼び捨てにしてみるけどなんか泣きたくなるよ
」
繋ぎとめられなかった思いも心も身体も
全部全部が消えてしまえばいいのにと
独りよがりの苦しみが私を縛り付ける夜も
いつかは明けてしまうらしい。
君の声が鮮明に蘇る朝に
私は記憶がなくなる未来を望む。
出来ることならまだ君を知らない頃の私に戻りたい。
近づけば近づくほど分からなくなっていった。
お互いのためにならない時間を繰り返しすぎたんだ。
このまま見て見ぬふりをして突き進めば
壊れてしまう関係を守るには
離れるしか方法が思い付かない私を
どうか許してね。
もう戻れなくなる前に
出会ったことを悔やんでしまう前に
その香りを嫌いになる前に
最後の印を刻んで
またねって笑顔で手を振ったんだ。
その跡が消える頃には君も私もそれぞれ
違う場所で違う人と笑っていられるようにと
心の底から願っているよ。
同じ温度で返そうと努力した言葉は
同じ冷たさで身体中を駆け巡る。
もう当分会えなくていい。
連絡もしなくていい。
君は私を忘れていいんだよ。
他人みたいな顔をして見つめ合えるように。
そばにいて、だなんて
二度と名前を呼ばないでね。
ありがとう、さよなら。