メビウスの香りがする7月。

 

 

 

信用できる敵みたいな君を

傷つける覚悟が私には足りない

 

愛にできることなんて最初から何も無かったんだと気付いた頃には

メビウスの香りが上書きされることは無くなった

 

愛してくれる人を失うことは

愛する人を失うよりも悲しいらしい

 

写真の中じゃいつまで経っても散ることのない桜

触れてしまえば見えなくなる君がくれた愛を

知らず知らずのうちに壊してた

 

夜から逃げ回る私は

真逆の結末を願いながら破滅へと駆け出す

この思いごと散り散りになって消えてしまうことを望んで

 

 

 

今日も明日も苦しいけれど

昨日の空は好きだったよ

 

曖昧な言葉を選ぶ理由は

自分のことしか考えていない証

 

 

懐かしい香りに染められた思い出だけが

いつまでも私を締め付ける

 

 

同じだけの熱量で返すことは散った花びらを全て拾い集めるくらいに難しくて

並べた綺麗事じゃ咲くことなんて出来ない

 

 

あの日の君にまた会えたとしても同じエンディングを迎えるだろうね

 

 

結えない愛、癒えない傷

私じゃない誰かなら叶えられた夢

 

 

もう違う香りがするこの場所も

7月だけは忘れられない記憶が邪魔をする

 

 

ごめんなさいすらちゃんと言えなかったあの日を許して欲しいなんて我儘な願いを綴るのもこれで最後にしよう

 

 

愛をくれた君が今日も愛に溢れていますように。

 

 

the kind of affection you needed

I'm sorry I couldn't fulfill my love to you.

 

君の選んだ正しさは間違いだらけで

私を優しくそっと傷付けた

 

いつしか埋め尽くされた嘘は

もう取り返しがつかなくて

縋った記憶さえ嘘をつき出したんだ

 

 

鈍痛のような苦しみが続く退屈な日だって

この関係がまだ続くようにと

見て見ぬふりをして

君の腕にしがみついたのに

 

奇妙な愛しさと偽物の優しさをありがとう

とこの手にすべての思いを託して

君の手を掴んだのに

 

 

切り裂いた闇夜に

詰めきれなかった距離が

消えてしまった影が

歪んだ星座が

もう戻れない時間だけを思い出させる

 

 

悪いことをしたら怒ってくれたことが愛だったのに

君が許さないでいてくれたことだけが救いだったのに

 

 

傷だらけの私は優しすぎる君を

まだきっと許せない。

 

 

 

 

ウソツキ

 

「やっぱりあなただけだ」って

お決まりのセリフも簡単に口にしてんの

全部知ってるから

 

 

薄情だなんて言わないでよ

シナリオ通りに進んだ駆け引きに飽きたでしょ

 

見え見えの嘘をついたって

答えはきっと変わらないんだ

 

嫉妬も束縛も面倒だね

早く消えてお願いだから

 

安っぽい慰めなんて期待してないのに

冷めきった言葉を放ち合う取り留めない会話

無駄なことはやめよう

 

都合のいい愛情なら全部わかったから

 

引き止めても今更でしょ

戻らないしもう届かない

 

陶酔してないで

現実見なよ

私も君も特別なんかじゃないんだから

 

強がらないで

本音で語りなよ

どうせ大したことなんてないんだから

 

答え合わせが出来たらいいね

一生悩んで苦しんでてもいいよ

 

恨むなら巡り合わせを恨んでね

 

ベールを纏ったまま踊っていよう

 

じゃあね、良き夜を。

 

 

 

 

 

 

その香りを嫌いになる前に、

 

さよならだね、

最後に君の名前

呼び捨てにしてみるけどなんか泣きたくなるよ

 

繋ぎとめられなかった思いも心も身体も

全部全部が消えてしまえばいいのにと

独りよがりの苦しみが私を縛り付ける夜も

いつかは明けてしまうらしい。

 

君の声が鮮明に蘇る朝に

私は記憶がなくなる未来を望む。

出来ることならまだ君を知らない頃の私に戻りたい。

 

近づけば近づくほど分からなくなっていった。

お互いのためにならない時間を繰り返しすぎたんだ。

 

このまま見て見ぬふりをして突き進めば

壊れてしまう関係を守るには

離れるしか方法が思い付かない私を

どうか許してね。

 

もう戻れなくなる前に

出会ったことを悔やんでしまう前に

その香りを嫌いになる前に

最後の印を刻んで

またねって笑顔で手を振ったんだ。

 

その跡が消える頃には君も私もそれぞれ

違う場所で違う人と笑っていられるようにと

心の底から願っているよ。

 

同じ温度で返そうと努力した言葉は

同じ冷たさで身体中を駆け巡る。

 

もう当分会えなくていい。

連絡もしなくていい。

君は私を忘れていいんだよ。

他人みたいな顔をして見つめ合えるように。

 

そばにいて、だなんて

二度と名前を呼ばないでね。

 

 

ありがとう、さよなら。

 

 

 

 

なんでもないよ

 

 

 

 

たとえ嘘でも唱え続ければ君はいつか勘違いしてくれると淡い期待を込めて繰り返した言葉は夜に溶けて消えていく。

愛想笑いの下で何を思ってるのと問いかけても秘密だと答えることもせず、不平も不満も綺麗に嘘で隠してしまう君が怖くて仕方ない。

 

過呼吸のまま鏡を割り続けた日々に意味があったのかどうかは2年経った今でも分からない。ボロボロになった身体で泣きついたあの日を覚えているのはきっと私だけだ。

誰のせいでもなく自分のせいだと繰り返し言い聞かせて耐えるのに精一杯だった私は狂気じみた毎日の結果を簡単にはのみ込めなかった。

 

すぐに跡形もなく消えてしまうことを知っていながら思いの欠片を少しでも残したくて私は君の腕を噛む。

はやく遠くへ離れていっそのこと手の届かないところにいて欲しいよ。もう二度と会えないなら一生仲良くしていける自信があるのにな。

 

他人に依存することはもうやめた方がいいと知っていながら繰り返す無能。期待を裏切る自分の情けなさを認めるには時間がかかるらしい。

些細なことをずっと覚えているのも諦め時が分からないのも今も昔も同じで“あと少し”と願う弱い心が苦しい。自分を驚くくらいに追い詰めては最終的に自暴自棄へと導く。

 

いつまで経っても成長しない自分が憎い。本当は言い訳が尽きそうで怖くて堪らないんだ。当たり前に言葉は感情をこえられないのに何度だって試してしまう。飼い慣らされた言葉じゃ一切響かないのに。

誰でもいいなら私じゃだめと強く言えたら楽なのかもしれないね。

 

優しくしないでと周りへ威嚇し続けた生活も疲れたでしょと見透かされた夜が懐かしくて消したはずの思い出を探してしまう。

いつだって適度な距離感は難しいみたいだ。

 

 

 

“ごめんね、君が欲しいよ”

なんてね。

 

 

 

 

なんでもないよ、今日で終わりにしよう。

グッバイ。

 

 

 

 

 

煙草と間違い探し1

 

六本木の春。

いかにもな車からサングラスをかけた高身長がクラッチバックと共に降り立つ。

いいね、これからが夜の始まりだ。

 

あってないようなドレスコード

訳の分からないゲームにはすぐ飽きた。

最終的にVIP席で寛ぐのがデフォ。

今日も飲めないお酒を隣の先輩に全部回す。

それなのにちっとも顔色が変わらないんだ、

面白くないの。

ネクタイをほどくフリして首を絞めてみた。

怒られると思ったのに笑いながらキスされた。

「どした?」

思い通りにならなくてむしゃくしゃしたから煙草を一本折ってやった。

やっと怒られた。

終電で帰るシンデレラの遊び、ばいばい先輩また明日。

 

 

渋谷の夏。

横一列になってみんなで歩いた道玄坂

迷惑行為を繰り返した記憶だけがしっかりと残る。

 

爆音がただひたすらに心地よかった。

私にとってテキーラは3杯で致死量になると知ったのはこの頃。

飲めないお酒は全部こぼした。

勿体ないと怒ってくるうるさい奴には口移しで全部くれてやった。

若さだけを頼りにはしゃぎまくった日々のうちの1日。

この箱飽きたと騒音の中で叫ぶ声。

耳元での大声は鼓膜が破れるからやめて欲しい。

抜け出した2人は行くアテもなく夜の街に溶け込んだ。

「好きだよ」

薄っぺらい言葉に重すぎる愛をのせて

秘密の関係が始まる。

もう終電じゃ帰らなくなった。

煙草くさい朝に乾杯し、

始発電車に飛び乗り先輩の肩で眠る。

 

 

 

日吉の秋。

突然過保護になるから周りにバレかけた。

先輩が何かで儲けて羽振りが良くなり、

私はこの頃から1円も出さなかった。

 

ハブで飲み続けたカルーアミルク

今でも一番好きなままだ。

ちょっと酔いそうになっただけでもう飲むのやめなってグラスを取られる。

相変わらず先輩の顔色は変わらない。

新しくなったZIPPOで今日もマルボロを吸う。

なんでいつまで経ってもシラフみたいなツラ下げてるの。

少し離れただけで隣に無理矢理割り込んできて

飲まされそうになったグラスを横取りする。

私はある意味無敵になったのに終電で帰されるようになった。

「またあとでね」

シンデレラ復活だ。

 

 

田町の冬。

同じような毎日の繰り返しに飽きる。

大学も行かなくなった。

先輩が私がこれまであった中で一番簡単に「愛してる」と囁く人間だと気付く。

  

朝方に帰ってくる先輩はいつも煙草とお酒の匂いがした。

そのままベッドに潜り込んでくる。

頭を撫でられたら全部許してしまう自分が憎い。

部屋で煙草を吸わないでと言えばIQOSを取り出すから

IQOSをぶち壊した。

先輩は怒らなかった。

怒らない先輩が嫌で部屋を飛び出したこともあった。

不在着信を溜めて永遠既読スルーをかましても

それでも先輩は帰っておいでよと優しくLINEをくれたんだ。

物には感情をぶつけられる癖に私は先輩に何ひとつ本当のことを言えなかった。

浮気を知っていても黙るしかできなかった。

直面するのが怖くて目をそらし続けたまま

さよならを告げたんだ。

 

シンデレラを卒業した。

貰ったブランドものの時計もバッグも未練なくばいばいできたのに

ただ手紙だけは捨てられなかった。

誰にでも言っていた「愛してる」の言葉と共に。

 

  

 

おやすみ

 

 

 

ここではないいつかの世界で同じ時に生まれてしまったならばすれ違うことのないように、すれ違っても振り返ることのないように、振り返っても声を掛けることのないように、声を掛けても抱きしめることのないように、と強く願った夜はいつも上手く息が出来ない

 

 

行き過ぎた優しさによって狂った運命の中で犯人探しをするだけ無駄だと分かっていながら手探りで真実を掴もうと必死な私は愚かで醜い

 

怖さを知らなかった初めての瞬間は遠い昔の記憶で今も残る愛されたいだけの幼さは独立した幸福を殺し不憫な自分の演出に全力を賭ける

 

大好きな誰かの役に立ちたいと願いながら盛大な迷惑をかけるこの人生の孤独の先に見つけた逃げ場でどんな言葉があれば私は満足出来るの

 

もう二度と思い出せない感情も風に揺れて舞った花びらも私が生きていた証でいて欲しかったのに誰にも知られることがなく溶けてしまったみたいだ

 

罪悪感と背徳感を履き違えた君は人が人を所有することを許さない時代で隠しきれなかった私の弱さを曖昧な言葉で蝕んでくる

 

この不都合な世界から存在がいなくなって初めて流した涙も震える声も本物だったと気付いてくれるなら私は喜んで姿を消してしまおう

 

ほっといてと強がったくせにずっと味方でいてくれた人と目も合わせられないままにもう頑張りたくないと冗談のような本音を零した

 

自制心で縛り上げた日々に何処にもぶつけられない苛立ちを募らせては酸素を吸いすぎた私は目眩に苦しめられながら痺れた指先で駄文を綴る

 

 

自分を変えてくれるのは自分ではなくきっと自分より大切な誰かの存在なのに自他の境界線をかき消してしまう過干渉に怯えて私は今日も他人に触れられないままうわべだけをなぞって月が姿を消してから気を失うように眠るんだ

 

 

 

おやすみ